2024.11.26
情シスとは?その役割と重要性を徹底解説
DX推進やデジタル化が加速する中、企業における情シス(情報システム部門)の重要性が高まっています。しかし、情シスの具体的な役割や業務内容については、必ずしも社内で十分に理解されているとは言えないのが現状です。
本記事では、情シスの定義から具体的な業務内容、直面する課題まで、その全体像を分かりやすく解説します。
情シス(情報システム部門)の定義と特徴
情シスとは「情報システム部門」の略称で、企業のIT環境全般を管理・運営する部門です。
基幹システムや業務システムの構築・運用から、社内インフラの整備、IT戦略の立案まで幅広い業務を担当。近年のデジタル化の加速に伴い、その重要性は増す一方です。
組織の形態は企業規模によってさまざまですが、全社的なIT活用を推進する要となる存在といえます。
■情シスと社内SEの違い
情シスと社内SEは、一見似て非なる存在です。最も大きな違いは、情シスが組織を指すのに対し、社内SEは個人を指す点にあります。
業務範囲の違い
情シスはIT戦略の立案から実施、システム構築、運用保守、ヘルプデスクまでを包括的に担当。一方、社内SEは主にシステムの開発や保守といった技術的な業務に特化しています。
求められる視点とスキル
情シスには経営的視点でのIT戦略立案や、部門間調整といったマネジメントスキルが求められます。対して社内SEは、より専門的な技術力が重視されます。
キャリアパス
情シスはマネジメント層やCIO/CTOへの道が開かれているのに対し、社内SEは専門性を活かしたエキスパート型のキャリアを築くケースが多いのが特徴です。
■情シスの企業内の立ち位置
IIJ社の全国情シス実態調査2024※によると、情シス部門の規模は企業の従業員数に比例する傾向です。従業員規模別の情シス部門の人数では、100人未満の企業では平均2.9人、100人から500人の規模では4.1人、501人以上1,000人の規模では7.8人と、規模に応じて人員体制は大きく異なります。こうして配置された情シスの担当者は、下記のような立ち位置を担います。
※引用元:IIJ法人調査レポート 「情報システム部門の人数」より
他部門との関係性
情シスは全社横断的な立場から、各部門のIT活用を支援します。システムやツールの導入・運用において、現場部門との密な連携が不可欠です。
経営層との距離感
DX推進の重要性が高まる中、経営層との距離は徐々に縮まる傾向にあります。ただし、まだコスト部門として見られるケースも多く、戦略的なIT投資への理解を得るための努力が必要です。
予算配分における位置づけ
システム投資は企業の競争力を左右する重要な要素となっていますが、その効果の可視化が難しく、十分な予算確保に苦心するケースも少なくありません。経営層の理解を得ながら、中長期的な視点での投資計画の立案が求められています。
情シスの主な業務内容
情シスの業務は多岐にわたります。先に挙げた情シス実態調査※では、下記のような業務が「時間を費やす業務」として挙げられており、部門に配置された人員がどのような作業に携わっているか窺うことができます。
- 既存システム導入検討・検索支援
- システム運用・監視
- セキュリティ対策・対応
- 新規システム導入検討・検討支援
- 社内問い合わせ対応
- IT戦略の策定・戦略策定支援
- DX推進関連の活動
- PC管理・キッティング作業
※引用元:IIJ法人調査レポート 「情報システム部門の人数」より
これらの業務をさらに整理して、情シスの仕事の内容をまとめてみると、以下のようになります。
■社内システムの構築・運用・保守
システムの構築から運用・保守まで、情シスの中核的な業務といえます。具体的には、次のような業務を行います。
システム構築プロセス
システム構築では、まず現場のニーズを丁寧にヒアリングし、具体的な要件定義を行います。その後、最適なベンダーを選定し、プロジェクト管理を通じて確実な導入を実現します。また、既存システムからの移行計画を立案し、業務への影響を最小限に抑えながら新システムへの切り替えを進めます。
運用・保守体制
運用・保守においては、日々の運用手順を確立し、必要なドキュメントを整備します。また、システムの稼働状況を常時監視する体制を構築し、問題の早期発見・対応を可能にします。定期的なメンテナンスや更新プログラムの適用なども、情シスの役割のひとつです。
■ヘルプデスク・サポート業務
社員のIT活用を支援するヘルプデスク業務は、日々の業務の円滑な遂行を支える重要な役割です。問題解決の迅速性と的確性が求められ、利用者の満足度に直結する業務といえます。また、社内のITリテラシー向上にも大きく貢献します。
対応体制の整備
問い合わせ対応フローを確立し、FAQやマニュアルを整備。社内教育・研修も実施することで、問い合わせの削減と対応品質の向上を図ります。
品質管理
インシデント管理を徹底し、サービスレベル(SLA)の設定・管理を行うことで、安定したサポート体制を維持。定期的な満足度調査も実施し、継続的な改善を進めます。
■セキュリティ対策の実施
セキュリティリスクが増大する中、対策の重要性は年々高まっています。特に近年は、サイバー攻撃の手法が巧妙化し、対応の難度も上がっています。また、テレワークの普及により、セキュリティの考え方も大きく変化しています。
予防的対策
セキュリティポリシーの策定と運用、定期的な脆弱性診断と対策の実施、社員向けセキュリティ教育の実施などを通じて、事故の予防に努めます。
インシデント対応
万が一の事態に備え、インシデント対応計画を策定。定期的な訓練も実施します。また、内部監査や外部監査への対応を通じて、セキュリティレベルの維持・向上を図ります。
■IT戦略の立案と実施
情シスの役割として最も重要なのが、IT戦略の立案と実施です。DXへの対応が急務となる中、経営戦略と密接に連携したIT戦略の重要性は、ますます高まっているといえるでしょう。
経営戦略との連携
企業の経営目標達成に向け、それを支えるIT施策を検討・提案します。DXの推進においては、新技術の導入による業務改革や新規事業創出の可能性を探ることも重要な役割です。
システム導入・刷新
既存システムの課題を分析し、新システムの導入や刷新を企画。その際には、コスト最適化とROI(投資対効果)の評価が不可欠です。中長期的な視点で、段階的な刷新計画を立案することが求められます。
企業における情シスの形態と特徴
情シス部門の形態は、企業規模や業態によってさまざまです。専任の情シス部門を持つ大企業から、1人で担当する中小企業、外部委託を活用するケースまで、その姿は多様です。それぞれの形態には特徴があり、メリット・デメリットを理解することが、効果的な運営につながります。
■複数人で構成される組織型
比較的規模の大きな企業で見られる形態です。複数のメンバーで構成されるため、役割分担を明確化し、効率的な業務遂行が可能です。システム開発、インフラ管理、ヘルプデスクなど、専門性に応じた担当制を敷くことで、高い品質のサービス提供を実現できます。
また、組織的なナレッジ共有や人材育成の仕組みを構築できる点も大きな利点です。定期的な情報共有ミーティングやドキュメント化の徹底により、特定の個人に依存しない体制を築けます。さらに、メンバーの休暇取得時や急な不在時にも、相互にバックアップできる体制を整えやすいという特徴があります。
■ひとり情シスの実態
中小企業でよく見られる「ひとり情シス」は、文字通り1人で全てのIT関連業務を担当する形態です。広範な業務を1人でこなす必要があるため、優先順位の付け方が重要になります。システムダウンなどの緊急対応から日常的な運用保守まで、時間配分の工夫が求められます。
外部ベンダーやクラウドサービスを積極的に活用し、業務の効率化を図ることが必須です。しかし、休暇取得が難しく、ワークライフバランスの維持が課題となりがちです。また、1人で全ての最新技術に精通することは困難なため、スキルアップの機会確保も大きな課題となっています。
■兼任情シスのケース
総務部門や経理部門など、他の業務と兼任で情シス業務を担当するケースです。本来の業務とIT関連業務の両立が求められるため、時間配分と優先順位付けが非常に重要になります。特に緊急のIT案件が発生した際、本来の業務とどちらを優先すべきかの判断に迷うことも少なくありません。
限られたリソースの中で効果的に業務を進めるには、できるだけ定型化や自動化を進めることが重要です。また、責任範囲を明確にし、対応可能な業務とそうでない業務を区分けすることで、過度な負担を防ぐ工夫も必要となっています。
■アウトソーシング型の特徴
自社で情シス部門を持たず、外部のIT企業に業務を委託する形態です。初期費用を抑えられ、必要な時に必要なスキルを調達できる柔軟性が特徴です。ただし、委託範囲の決定には慎重な検討が必要で、自社のコアコンピタンスに関わる部分は内製化を検討すべきでしょう。
信頼できるベンダーの選定も重要なポイントとなります。コストと品質のバランス、実績、サポート体制などを総合的に評価する必要があります。また、効果的な連携のために社内に窓口となる担当者を置き、ベンダーとの調整や品質管理を行うことが望ましいとされています。
情シスが直面する課題と解決策
IIJの全国情シス実態調査2024※によると、
情シス部門が抱える課題のトップ3は「人材(できる人)不足」「属人化している業務の存在」「人員(人数)不足」となっています。特に中小企業では深刻な状況が続いており、業務効率や品質の低下が懸念されています。これらの課題に対する適切な対策が、今後の企業成長の鍵を握ると言えるでしょう。
※引用元:IIJ法人調査レポート 「情報システム部門の課題」より
■人材・スキル不足の問題
情シス部門における人材・スキル不足は、年々深刻化しています。経済産業省の調査によると、2030年にはIT人材が約79万人不足すると予測されています。特に、クラウド技術やセキュリティ、AIなど、新しい技術への対応が求められる中、必要なスキルセットは多様化の一途を辿っています。
一方で、人材育成には相当な時間とコストがかかります。技術の進化スピードが速く、育成が追いつかないという現状も。さらに、IT企業との人材獲得競争も激しさを増しており、魅力的な処遇や働き方の提供が欠かせません。中小企業では特に、予算の制約から十分な採用活動や育成投資が難しい状況が続いています。
■業務の属人化による弊害
情シス業務の属人化は、組織の大きなリスク要因となっています。特定の担当者に知識やノウハウが集中し、その人物が不在になると業務が滞ってしまう事態が発生します。システムの構築経緯や運用手順など、暗黙知として蓄積された情報は、文書化が困難なケースも多く見られます。
また、属人化は業務効率の低下も招きます。手順書やマニュアルが整備されていないと、同じような作業に時間がかかったり、トラブル対応が遅れたりする事態が発生するでしょう。さらに深刻なのは、キーパーソンの退職時のインパクトです。引継ぎが不十分なまま担当者が離職すると、システム運用に重大な支障をきたす可能性があります。
■他部署との連携における課題
情シス部門と他部署との間には、しばしば大きなコミュニケーションギャップが存在します。技術的な専門用語や概念の理解度の違いから、要件定義の段階でミスコミュニケーションが発生することも少なくありません。また、現場が期待する機能や改善要望と、技術的な実現可能性の間にずれが生じることも多々あります。
プロジェクトの優先順位付けも大きな課題です。各部署から寄せられる要望の緊急度や重要度が異なる中、限られたリソースをどう配分するか。さらに、部署によってITリテラシーに大きな差があることも、円滑な連携を妨げる要因となっています。結果として、システム導入や改修プロジェクトに遅延が生じるなど、様々な軋轢が生まれています。
■コスト部門としての認識問題
情シス部門は依然として、「コストセンター」という認識から脱却できていない企業が多く存在します。IT投資がもたらす効果は、売上や利益といった数値で直接的に表れにくく、その価値を適切に評価することが困難です。そのため、経営層からの理解を得にくく、必要な予算の確保に苦心するケースが後を絶ちません。
このような状況を打開するには、IT投資の効果を可視化する取り組みが不可欠です。業務効率化による工数削減、セキュリティリスクの低減、競争力強化など、定量的・定性的な効果を示すことで、戦略的投資への理解を促進する必要があります。DX時代において、ITは単なるコストではなく、企業成長の源泉となる投資であるという認識の転換が求められています。
情シスのアウトソーシング活用で得られるメリット
情シス部門が抱える人材不足や属人化の課題に対する有効な解決策として、アウトソーシングの活用が注目されています。専門性の高い業務を外部の専門家に委託することで、自社の情シス部門は戦略的な業務に注力できるようになります。
適切なアウトソーシング活用は、以下のような具体的なメリットをもたらします。
■人的資源の最適化・コスト削減
情シス業務のアウトソーシングは、人的資源の最適化とコスト削減に大きく貢献します。従来は正社員として抱えていた人件費を変動費化でき、必要な時に必要なスキルを持つ人材を柔軟に調達することが可能になります。新規採用や社内教育にかかる時間とコストも大幅に削減できるでしょう。
特に中小企業にとって、フルタイムの専門家を雇用するのは大きな負担となります。アウトソーシングを活用すれば、高度な専門性を持つ人材を必要な分だけ確保でき、業務量の増減にも柔軟に対応できます。また、定型業務の効率化や標準化も進めやすく、結果として総合的なコストパフォーマンスの向上が期待できます。
■属人化による弊害の回避
アウトソーシングの活用は、情シス業務の属人化を防ぐ有効な手段となります。委託先の企業では、複数の担当者がナレッジを共有し、標準化された業務プロセスに基づいて対応します。これにより、特定の個人に依存せず、安定した業務運営が可能になります。
また、複数のベンダーと協業することで、リスクの分散も図れます。一社に依存することなく、それぞれの強みを活かした体制を構築できます。さらに、外部の視点を取り入れることで、業務改善の機会も増えます。定期的な業務の見直しや改善提案を通じて、継続的な業務品質の向上も期待できるでしょう。
■品質の向上
アウトソーシング先の専門性を活用することで、情シス業務全体の品質向上が見込めます。委託先企業は多くの導入実績を持ち、業界のベストプラクティスに基づいた対応が可能です。
さらに、委託先企業は常に最新の技術動向をキャッチアップしており、その知見を活用できることも大きなメリットです。特に、24時間365日の運用監視や障害対応など、自社での対応が難しい業務も、専門チームによる高品質なサービスとして受けられます。これにより、社内の情シス担当者は、より戦略的な業務に注力することが可能になります。
まとめ
情シスは、企業のIT環境を支える重要な存在でありながら、人材不足や属人化、予算確保の困難さなど、数多くの課題に直面しています。しかし、アウトソーシングの戦略的な活用や、経営層との対話を通じた理解促進により、これらの課題は着実に解決できます。
今後、DXの進展とともに情シスの重要性は一層高まることが予想されます。企業の持続的な成長のためにも、情シス部門の強化と適切な支援体制の構築が不可欠といえるでしょう。
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